徳島大学?高知大学?香川大学との共同開催
(SPOD開放プログラム)「授業について考えるランチセミナー」<自己調整学習の視点からオンデマンド型授業を考える>が開催されました。
ご参加いただいた皆さま、大変ありがとうございました。

■開催日時
 第1回 2025年5月  8日(木)12:05~12:50
 第2回 2025年5月15日(木)12:05~12:50

■参加者
 第1回 5月  8日
  84名(Zoomによるオンライン)
 第2回 5月15日
  77名(Zoomによるオンライン)

■コーディネーター?講師?登壇者
  コーディネーター: 杉田 郁代(高知大学学び創造センター)
 第1回 5月  8日
  講師: 杉田 郁代(高知大学学び創造センター)
 第2回 5月15日
  講師: 杉田 郁代(高知大学学び創造センター)
    
■内容
 第1回
 第1回では、まずオンデマンド型授業のデメリットである自己管理の難しさや授業内容の理解不足、教員や友人とのコミュニケーション不足あるいはモチベーションの低下に対する方策として、自己調整学習の理論が有効であることからセミナーが始まった。自己調整学習とは「自ら主体的に学ぶ、学びを自分で調整すること」であり、「自身の学習過程を促すために様々な認知的—動機付け過程をコントロールできる学生であり、そのために自分が学習の舵をとっていて、自分自身の学習過程の主体であると感じている学生」(シャンク?ジマーマン編著、塚野編訳, 2009)である。自己調整学習には予見段階?推敲段階?自己省察段階があり、その中で学生は様々な学習方略(方法)を用いている。自己調整学習において重要となる学習方略が認知的方略、メタ認知的方略、学習リソース活用方略である。さらにはこの学習方略に加え、動機付けとメタ認知(自分自身の思考に対する気づきと知識)が自己調整学習の3つの要素として紹介された。また自己調整学習を促すには、学生が「自分にはそれができる」という自己効力感を高めることが重要であることも挙げられた。
 続いてオンデマンド型授業において自己調整学習を促すために求められる要素として、形成的評価の実施、他者と関わる学び合いの機会を設定すること、分からない部分を質問できるといった援助要請がしやすい環境を作ることの3つが講師から提示された。
 最後に講師からは自己調整学習を促すにあたり、学生には様々な学習スタイルがあること、加えてどの学習スタイルでも学生が学習しやすいよう「学びのユニバーサルデザイン」を意識することの重要性が解説され、第2回への橋渡しがなされた。
参考文献:ディル?H.シャンク, バリー?J.ジマーマン編著;塚野州一編訳(2009)『自己調整学習と動機づけ』北大路書房


 第2回
 まず講師から「学びのユニバーサルデザイン」とは、学生自身が自分の学習しやすい方法で、自ら舵取りして学習を進めることを促すものと説明がなされた後、CASTによる学びのユニバーサルデザインのガイドライン(https://udlguidelines.cast.org/static/udlg3-graphicorganizer_japanese.pdf)が紹介された。その中でも学びのユニバーサルデザインの重要な要件として「取り組みのために多様な方法をデザインする」「提示(理解)のために多様な方法をデザインする」「行動と表現のために多様な方法をデザインする」が挙げられた。
 その後、オンデマンド授業においてアクティブラーニングを促すための方法と実践例として、様々なオンラインツールを用いた工夫が講師から紹介された。その中には付せんツールmiro(https://miro.com)のワードクラウド機能を使って意見の違いを可視化したり、オンライン上でのプレゼンとコメントを行うことで学生のコミュニケーションを促す活動の設計や、Padlet(https://ja.padlet.com/)を用いて発表形式を動画やスライド等様々な形の提出を許可することで課題を「学習者の選択の余地がある」ものとする、sli.do(https://sli.do/)によって学生の意見を収集する、大学のLMSに動画教材とテキストデータ、小テストを組み合わせた教材をアップロードするといった、いずれも講師が自身の授業で実践しているものが挙げられた。
 最後に、参加者からの質問やコメントに対して講師からの回答がなされた。

■成果と課題
 
参加者アンケートを行った結果、「5. 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」という設問において、第1回、第2回ともにほとんどの回答者から肯定的な回答 (「とても当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」の合計) を得ることができた。また、他の設問においてもおおむね肯定的な回答が得られた。

表 アンケート設問「5. 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」回答結果
   第1回(5月  8日)   第2回(5月15日) 
とても当てはまる

21 (56.8%)

17 (60.7%)

どちらかといえば当てはまる 16 (43.2%) 10 (35.7%)
どちらかといえば当てはまらない     0 (0%) 1 (3.6%)
まったく当てはまらない 0 (0%) 0 (0%)
合 計

38 (100%)

28 (100%)

※その他のアンケート項目の結果はグラフを参照。

 自由記述においては、第1回では主に自己調整学習について知ることができたという感想が多く寄せられた。続く第2回では、具体的なオンデマンド授業の工夫、とくにオンラインで使える各種ツールを知る機会になったというコメントが多く見られた。また、学生の相互学習を促すこと、双方向性を担保することといった授業設計の面からも参考になったといったコメントもあった。さらには、これらの工夫についてはオンデマンド授業だけでなく、対面授業にも共通した重要な点であると感じ、そのことをコメントに記載した回答者も見られた。
コロナ禍がひとまず一段落し、オンデマンド授業から対面授業に戻した教員も多くいた中で、今回のセミナーは自己調整学習、ユニバーサルデザインという視点から再度オンデマンド授業のメリットについて考える機会となったと考えられる。また、今回紹介された理論や実践上の工夫、とくに様々なツールはアンケートの自由記述にも見られたように、対面?同期型オンライン型授業?オンデマンド型授業を超えて用いることができるものであると同時に、授業を成り立たせるための根本的な要素が多く含まれていると言える。一方で対面授業が再び主要になった現在では、今回のセミナーで提示された理論や実践事例を対面授業でどのように用いることができるかについても事例紹介が必要であろう。また、実際にこれらの授業を経験した学生の声も聞くことで、教員だけでない学生視点からの授業設計に向けた気づきも得られると考えられる。今後もよりよいセミナーを目指し、改善を進めていきたい。

■アンケート回答結果
 第1回 (n=37)

グラフ1.png
 第2回 (n=28)
グラフ2.png 

■セミナーの模様(アーカイブ動画より抜粋)
写真1.png
写真2.png 

ご不明な点などございましたら、下記アドレスもしくは、電話でお問合せください。
教育支援課教育企画係 メール:kykikakuk@tokushima-u.ac.jp 
           電 話:088-656-7686 内線(82)7125

徳島大学全学FD推進事業も紹介していますのでぜひご覧ください!
http://www.tokushima-u.ac.jp/highedu/reform/

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